好酸球性副鼻腔炎の治療
2023.05.14
1 局所療法
・自己鼻洗浄(鼻うがい)
・ステロイド点鼻薬
副作用もほとんどなく、継続可能な治療法です。これらだけで治癒は難しいですが、手術後の再燃防止として重要です。
2 ステロイドの全身投与(内服)
多くの患者さんで、数日の内服で鼻茸が縮小し、症状が劇的に改善します。しかしそれだけで完治するわけではなく、ステロイドは副作用の可能性があるので長期の継続は避けるべきです。したがって、増悪時短期間の服用が原則です。
ステロイド全身投与の副作用は、骨粗鬆症、高血圧、糖尿病、胃潰瘍などがあり、長期投与ではなく年4回程度の短期投与であっても、副作用のリスクはあるとされています。
経口ステロイドは有効であっても、やめてしばらくすると再燃し、症状を繰り返すことが多いです。
3 内視鏡下副鼻腔手術
好酸球性副鼻腔炎では多くの患者さんに、内視鏡下副鼻腔手術が適応となります。
目的は、各副鼻腔を隔てている薄い骨を切除して副鼻腔を単洞化して、炎症を起こす粘膜を減量するとともに、鼻腔との交通路も広げて貯留液の排出を容易にし、治療薬(ステロイド点鼻)も入りやすくすることです。
手術によって症状も劇的に改善することが多いです。しかし体質までは治らないので、再発することも多いです。
4 合併する気管支喘息の治療
喘息の治療も重要です。吸入(ステロイドと気管支拡張剤の合剤)が中心になります。吸入した後吐き出すときに、鼻から出すと副鼻腔炎にも有効とされています。
5 合併する感染症の治療
好酸球性副鼻腔炎では、しばしば一時的に細菌感染を起こすこともあります。細菌感染を起こすと、それによって好酸球性炎症も悪化することが多いです。
細菌感染を起こしたときは、抗生物質も必要です。
6 デュピクセント(注射)
最近になって保険適応になったのは、デュピクセントという注射薬です。これは、好酸球性副鼻腔炎にも関与する「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑える薬です。本庶佑先生がノーベル賞を取って有名になったオプシーボのような分子標的薬の仲間です。
ステロイドのような明らかな副作用がないため、ステロイドよりデュピクセントを推奨する専門家もいます。一般的には、手術後の再燃に対して繰り返し内服ステロイドが必要になるような方が主な対象となります。
高額(3割負担で1本約19,000円の注射を月1回ないし2回)なので、難病と認定されて医療費の補助が受けることが前提になることが多いです。
病態の研究も進み、いろいろな新しい治療法も開発されており、将来的にはさらに有効な治療法ができると期待されています。