長引く子供の副鼻腔炎
副鼻腔炎の鼻汁の中には細菌と大量の起炎物質が含まれています。
鼻汁を溜めたままでは、いくら薬を飲んでも効きません。
しかし副鼻腔炎の鼻汁は、主に鼻の奥に溜まるし、粘り気がとても強いので、鼻をかんでも出てきません。
鼻汁を奥の方までしっかり吸い取ることが大切なのです。
当院では、小学生以上のお子さんなら、局所麻酔液で痛くないようにした上で、吸引管でしっかり吸引をおこなっています。総鼻道(メインの息の通り道)を奥まで吸引するだけでなく、中鼻道(副鼻腔との交通路の開く部位)、下鼻道(サブの息の通り道)までしっかり吸引します。
乳幼児でも、オリーブ管(丸いガラスの吸引管)による鼻の前の方からの吸引で不十分な時は、あまつ式という、鼻に入る管の部分が柔らかいシリコンでできた吸引管で、奥まで吸引します。
子供には“慢性副鼻腔炎”はほとんどなく、“急性”を繰り返しているのです。しっかり鼻汁を吸引して、適切な薬を使えば、早く治すことができます
2歳未満のお子さんの急性中耳炎が遷延し、反復して治らない
お子さんの中耳炎が治らない理由
肺炎球菌ワクチンが普及し、新しい抗生物質も登場して、10年ほど前に比べるとかなり少なくなりましたが、急性中耳炎が遷延したり反復して治らない2歳未満のお子さんは、今でも結構いらっしゃいます。それには以下のような理由があります。
*原因となっている起炎菌に有効な抗生物質を適切な量と期間使っていない
*合併する鼻副鼻腔炎をきちんと治していない
*多剤耐性菌(多くの抗生物質が効かない菌)がついている
*抗生物質を続けているうち、カビ(カンジダ)がついて、耳漏が止まらなくなっている。
*2歳未満のお子さんでは、免疫が未熟である
難治性中耳炎の治療
細菌検査を行って、有効な抗生物質を必要な量と期間使うのが原則ですが、抗生物質だけで難治性中耳炎を治すことは難しく、長期の抗生物質投与は、多剤耐性菌を増やして、かえって中耳炎を悪化させます。鼓膜切開は、迅速に痛みを取ってと熱を下げる事ができますが、一時凌ぎにしかなりません。
そのようなお子さんでも、鼓膜にチューブを入れる手術を行うと、大多数のお子さんで中耳炎を全く起こさなくなり、たとえ起こしてもすぐ治るようになります。
当院では、急性中耳炎が遷延したり反復して治らないお子さんに、局所麻酔で鼓膜チューブ留置を行っています。全身麻酔は2歳未満のお子さんではリスク等もありますし、開業医でこの手術を行っている医院はそれほど多くありませんので、遠くからこの手術を希望して当院にいらっしゃる方もあります。
鼻づまりが何ヶ月も続いているが、原因がわからない
アレルギー性鼻炎であったり、すぐわかるような副鼻腔炎であったり、鼻中隔が大きく曲がっていたりすれば、鼻閉感(鼻詰まり)の原因もすぐ分かりますが、そうでない場合も結構あり、他の病院で診断がつかずに当院を受診される方も多いです。
私(院長)は大学病院に勤務していた頃、鼻閉外来という専門外来を担当していた時期がありました。鼻詰まりに関しては、一般の耳鼻科の先生より、経験と知識の引き出しは多く持っていると思います。
当院では、鼻腔の観察に特化した、短く、角度もつけやすい細径内視鏡を用意しています。これによって、通常の内視鏡では見えない狭い部分の奥まで見ることができるので、匂いを感じ取る嗅裂や、副鼻腔との通路がある中鼻道などの様子を知ることができます。
自覚症状としての鼻閉感と、客観的に評価した鼻閉は、必ずしも一致しません。そのような場合、当院では、鼻腔通気度計という、鼻詰まりを客観的に、グラフや数字で表せる検査機械で検査を行います。この検査機械も、一般の耳鼻咽喉科にはあまりないと思います。
薬剤性鼻炎というのは、血管収縮剤の入った点鼻薬の連用で、かえって鼻詰まりが長引いてしまう病気です。市販の点鼻薬の多くは、血管収縮剤を含有しています。鼻詰まりの治療に使った点鼻薬が、”リバウンド”で、鼻詰まりの原因になってしまうのです。私は薬剤性鼻炎の患者さんの経験も、普通の先生より多いと思います。”今日の耳鼻咽喉科・頭頚部外科治療指針”という本では、薬剤性鼻炎について執筆させてもらいました。
血管運動性鼻炎というのは、自律神経の不調が原因で、アレルギー性鼻炎に似たような症状が起きる病気です。一般の鼻炎薬も有効なことがありますが、他の自律神経症状を伴うことも多く自律神経の不調を改善させることも必要です。当院では治療に漢方薬を加えることが多いです。
アレルギー性鼻炎であれば、適切な薬を使用すれば鼻づまりをコントロールできますが、薬はどんなに効いても、症状を抑えるだけで、長く続けてもアレルギーが治るわけではありません。アレルギーを”治す”ためには、舌下免疫療法が有効です。当院でも積極的に舌下免疫療法を行っています。
レーザー治療の効果の持続は、最新のデータでは3ヶ月から6ヶ月程度ですが、比較的即効性のある治療法です。花粉症の予防に、12月から1月ごろにレーザー治療を行うことは有用です。通年性アレルギーやアレルギー以外の原因の鼻づまりにも行っています。
軽度の鼻茸などは、当院で局所麻酔で内視鏡下手術を行っています。治療を行っても治らず手術が必要な、中等度以上の副鼻腔炎や、高度の鼻中隔弯曲症については、その手術のエキスパートである、慈恵医大の先生を紹介しています。
のどのつかえ、つまり、違和感
のどのつかえ、つまり、違和感といった症状は、咽喉頭違和感と呼ばれ、よく見られる症状ですが、原因は様々です。
下咽頭癌や喉頭癌でも、このうな症状が起こります。だから、のどのつかえ、つまり、違和感が長引く時には、耳鼻咽喉科を受診して内視鏡によるのど の検査を受けてください。
もちろん、癌ではない他の原因の事も多いです。内視鏡で見て癌がなければ、異常なしと言われてしまう事もあるでしょう。それで安心して症状がなくなれば、それに越したことはないです。しかし、癌ではないと言われても、症状は続く事があります。治らないのどのつかえ、つまり、違和感には、必ず原因があります。原因がわかれば、治す方法も見つかります。
のどのは複雑な構造の上に、嚥下や発声でよく動く部位なので、実は正常であっても、意識して唾をのむと、軽く引っかかる感じは誰でもあり得るものです。舌の付け根にある舌扁桃が大きかったり、のどを守る喉頭蓋という蓋の形が普通と違っていたり、喉頭が左右不対称であったり、いずれも病気とは言えない、のど の構造のバリエーションのようなものでうが、これらがあると、尚更咽喉頭違和感は起こりやすくなります。
ふだんはあまり気にならなくても、とくに自律神経の調子が悪かったりした時はのどが敏感になりますので、それだけでも咽喉頭違和感が起きることがあります。
睡眠不足やストレスが多い時、あるいは女性の方であれば、ホルモンのバランスが大きく変わる時などには、この症状が出やすいです。のどのつかえ、つまり、違和感は、自律神経失調症の症状として、頭痛、肩凝り、胃腸症状、冷えやのぼせ、などと並んで多く見られるものです。
また、唾液は年齢とともに粘性になりますが、とくに自律神経の調子が悪い時に多いようですが、口に出て来た唾液が押し上げられてた鼻の奥(鼻咽腔=上咽頭)にまったり、のど の奥にたまったりして、違和感の原因になることがあります。唾がたくさんのど の奥にたまると、時々その唾が気管に流れ込みますから、咳が続いたりもします。
胃液が食道に逆流して、それがのどまで痛めて咽喉頭違和感を起こしている方も、少なくありません。
内視鏡によってのど の奥を詳細に観察するとともに、睡眠やストレス、他の自律神経症状などをお聞きして、何が原因になっているか、見極めることが大切です。
胃液の逆流があるようなら、胃酸を抑える薬を処方し、唾液がたまっているようなら、無理に出そうとして咳払いをせずに時々水を一口飲むように指導します。
自律神経の症状が主であれば、のど以外の自律神経症状も参考に、漢方薬を選択、あるいは組み合わせて処方します。特別な病気が原因ではない咽喉頭違和感には、漢方薬が著効することも多いです。
のどの奥に魚の骨が刺さって、近くの耳鼻科では取れない
魚の骨は口蓋扁桃に刺さることが多く、それなら口を開ければ見えるし、摘出も簡単です。
しかし、のどの奥の方に刺さって、内視鏡を使わなければ見えなような場合は、摘出のための鉗子を使える特別な内視鏡が必要です。
鉗子付き内視鏡は、大きな病院にはありますが、開業医では持っていないことが多いので、患者さんがかなり遠くから当院にいらっしゃることもあります。のどの奥の魚の骨が刺さると、痛くて水を飲むのも辛いので、午後や土曜日など大きな病院で受け付けてもらえない時などは、インターネットで鉗子付き内視鏡のある病院を探し、当院を見つけてくださるようです。