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小児に多い病気

小児耳鼻咽喉科

風邪は耳鼻咽喉科の病気

カゼはウイルスの感染による鼻とのどの炎症です。ですからカゼは、鼻とのどの専門家である耳鼻咽喉科の専門範囲となります。鼻の中の様子や、のどの状態によって、同じカゼでも薬や治療法も違ってきます。また、大人でも時々ありますが、特に小児ではカゼがきっかけで副鼻腔炎や中耳炎になることもよくあります。

 

いろいろな扁桃炎

扁桃はのど(咽頭)にあって、本来は免疫に携わって体を守る働きをしています。扁桃が体を守ろうとしてウイルスや細菌と戦っているのが扁桃炎とも言えます。しかし、かえってのどの症状を強くしたり、細菌の巣になってしまう場合もあります。扁桃の感染症は小児科の先生も診ますが、耳鼻咽喉科医ものどの専門家として対応しています。以下、様々な扁桃炎です。

溶連菌感染症

扁桃に強い炎症を起こす細菌の代表は、溶連菌です。たいては扁桃とその周囲が特徴的な真紅色になりますので、のどを見ただけで見当がつくことも多いです。典型例では舌も赤くなって、苺舌と呼ばれます。いろいろな毒を持った菌ですので、高熱とのどの強い痛みの他にも、皮膚に発疹が出たり、お腹の症状が出たり、抗生物質のある現代では滅多にありませんが、腎臓や心臓まで悪くする可能性がありますので、早く診断して有効な抗生物質を使う必要があります。伝染する病気ですので、人にうつさない用心も必要です。扁桃はウィルスで炎症を起こす場合もあります。

伝染性単核症(EBウイルス)

思春期頃に多い、扁桃炎を起こす病気に、「伝染性単核症」があります。EBウイルスという誰でもかかるようなウイルスが原因ですが、初めての感染の時に重い症状が出ることがあります。普通の扁桃炎とは違う全体に汚い苔が付いているような所見が典型で、大抵の場合頸部(くび)のリンパ節が大きく腫れます。肝機能障害を伴うことが多く、血液検査で異型リンパ球という、特別なリンパ球が見られることも多いです。この病気は、重症化して入院が必要になることがありますので、血液検査を行ってしっかり診断することが必要です。

咽頭結膜熱(プール熱:アデノウイルス)、ヘルパンギーナ、手足口病

幼小児で扁桃炎を起こす代表的なウイルスにアデノウイルスがあります。結膜炎と高熱を伴うことが多いので、正式な病名は「咽頭結膜熱」と言います。通称プール熱とも言います。熱が高い割には元気で、合併症も少ないのですが、伝染する病気ですので、治るまで園や学校を休まなければなりません。

 

他に夏に多い咽頭炎に、ヘルルパンギーナと手足口病(右図)があります。いずれに特徴的なのどの所見を示します。

耳垢栓塞(みみあか)

軟性耳垢

小学生のお子さんが耳鼻咽喉科健康診断でこう判定されることがときどきあると思います。

 

本当にご家庭では除去することができないぐらい耳垢が詰って、聴こえにも影響が出そうな場合と、単純に耳垢のせいで鼓膜が見えず、診断がつけられないだけの場合があると思いますが、こう判定されたらいずれにせよ、耳鼻咽喉科を受診してください。

 

耳垢を取ってみたら、保護者の方が気がつかないままでいる滲出性中耳炎などが見つかることが時々あります。耳垢は、外耳道の皮膚の古い上皮が剥がれたものと耳垢腺からの分泌物とでできています。前者が主体のものを乾性耳垢、後者が顕著なものを軟性耳垢と呼びます。

耳垢腺の分泌の程度(耳垢腺の数)は、常染色体優勢遺伝によるとされます。ご両親のどちらかでも軟性耳垢だと、お子さんもそうなるということです(いろいろな条件で、例外もあるようです)。

 

白人の方や黒人の方では大多数が軟性耳垢です。日本人では、1割5分から3割が軟性耳垢だと言われています。中国や韓国の方はもっと少ないそうです。軟性耳垢の方が乾性耳垢に比べ、耳垢栓塞を起こしやすいです。

 

軟性耳垢は、茶色いべたべたしたもので特有の匂いがあります。赤ちゃんの耳が臭いと心配して受診されるお母様がときどきいらっしゃいますが、たいていはこれです。耳垢腺は、汗腺のうち匂いのあるアポクリン腺と同じものだとされています。

 

耳垢腺の分泌物は毎日少しずつ分泌されて、たくさん溜まってから取ろうと思っても奥に押し込んでしまうだけになることが多いです。そうなったら、もう耳鼻咽喉科でなければ取れません。

習慣性扁桃炎と扁桃摘出術

習慣性扁桃炎と言って、細菌性扁桃炎特に溶連菌の感染を繰り返す場合、溶連菌が扁桃に住み着いて毒を出し続けていることがあります。その場合は、扁桃摘出手術が必要です。全身麻酔の手術で1週間程度の入院が必要ですが、手術を行えば、頻回に繰り返していた高熱もぴったり出なくなります。

声帯結節

小児の声がれの原因として一番多いのがこれです。声を無理に使いすぎて起きます。とくに炎症があるときに声を使いすぎるとできやすいようです。言ってみれば、手にできる豆のようなものですので、声を使わないようにすれば治ることが多いです。

大人でも保母さんや、幼稚園、小学校の先生などよく声を使う方にできることがありますが、子供で多くてしかも長引くのは、大きな声を出す男の子です。大人ではまれに手術が必要になることがありますが、元気な子に声の安静(声を出すな)というのは無理ですし、治らなくても幸いどんなに遅くても声変わりの時期を過ぎれば自然に治ることが多いので、子供の場合はあまり心配せずに様子を見ます。ただ、声がれが長引いたり重症だったりするお子さんは、確定診断をつけるために、一回は耳鼻咽喉科で内視鏡で声帯を見ておいた方がいいと思います。

耳垢除去後

そうならないようにするためには、毎日の入浴後に、綿棒で耳の入り口の湿り気を拭き取るようにするのがベストです。この際、耳垢腺は外耳道の入り口付近に集中しているので、綿棒を奥まで入れないことが肝心です。外耳道の深部は入り口と違って皮膚が薄く傷つきやすいし、外耳道の入り口から鼓膜までの距離は意外に短いので子供では簡単に鼓膜に当たってしまいます。

 

乾性耳垢も同様で、外耳道の入り口につきやすく深部の薄い皮膚にはつきません。耳垢の掃除は、基本的には見える範囲でよいのです。乾性耳垢は、軟性耳垢のように毎日掃除する必要はありません。

 

耳垢がなかなか取れないときや、お子さんが掃除をいやがって動いてしまって外耳道や鼓膜を傷つける心配があるときは、耳鼻咽喉科で掃除するようにしてください。耳垢が溜まりやすい方でも、小さなお子さんなら半年に1回、大きくなってからであれば1年に1回来てくだされば十分です。

 

耳垢のタイプについては、縄文人は軟性耳垢で、渡来した弥生人は乾性耳垢だったという説があります。軟性耳垢は北海道と沖縄では比較的多いという報告もあり、これは大陸から渡来した弥生人(新モンゴロイド)が西日本を席巻したが、北海道沖縄まではその力が及ばす、縄文人(古モンゴロイド)の特質が保存されたのだというのです。耳垢が歴史ロマンに通じる面白い説なのですが、根拠は薄いようです。

耳・鼻の異物

鼻内の異物の大多数は、幼少児が故意にあるいは悪戯で挿入してしまったもので、珍しいものではありません。異物の種類としては紙屑、おもちゃの弾丸や首飾りの玉、ビーズ、消しゴム、スポンジ、豆類などが多く見られます。


外耳道の異物も同様に小児がほとんどですが、成人でも、耳掃除のときに脱落した綿棒の綿などが見られることがあります。また、けして稀ではないものとして、外耳道への昆虫(ゴキブリ等)の侵入もあります。右の写真は小児に見られた外耳道異物(プラスチックの球)の例です。

 

鼻出血(鼻血)

耳鼻咽喉科の病気はたいてい暑いときは減りますが、鼻出血だけは増えます。鼻出血の大多数はあまり心配のいらないものです。とくに幼稚園から小学校低学年ぐらいまでは、とくに夏、のぼせやすい季節には多いものです。

 

この場合は、たいていはキーゼルバッハ部位と呼ばれる、鼻中隔(左右の鼻腔を分けている、鼻の真ん中の壁)の、鼻の入り口に近い方の細い血管が集まっているところからの出血です。ここに浅い小さな傷ができただけでも、鼻の入り口に近い刺激を受けやすい場所だけに、出血をくり返しやすいですが、通常は出てもすぐ止まります。

 

出血してしまったら鼻翼(鼻の入り口の周り)を指で上から圧迫すること。鼻をつまむようにしてもいいです。

 

ときどきもっと上の方の固い鼻骨の上から押さえている方がいますが、それでは圧迫になりません。姿勢は座って下向きかげんの方が良いです。上を向いていると、鼻血が前に出てこないので、一見よいようですが、実際には鼻の奥で血が黒いゼリーのように固まってしまったり、のどに流れて、胃まで飲み込んでしまったりして、よくありません。鼻の中にティッシュなどを詰めるのも、止まるのには効果があるかも知れませんが、取り出すときにまた傷が開いてしまうこともあるので、良いと言えません。

 

鼻血が出やすいときの予防は、のぼせないこと、さわらないことです。

入浴はシャワーだけにして湯船につからないようにする、顔を洗うときも普通に洗ったのでは鼻を動かして刺激してしまうので、そっと拭くだけにするといった、注意が必要です。粘膜の小さな傷が完全に治って粘膜が正常になるのに1週間はかかりますので、その間鼻血がまた出てしまうと、いつまでたっても血が出やすい状態が続きます。あまり続く場合は、自然に溶けて抜去する必要の無いタイプの止血用スポンジを、傷に当てることもあります。

大人では、こどものようにすぐ鼻血は出ませんので、鼻出血には何が原因があることが多いです。キーゼルバッハ部位からの出血であったとしても、小さな血管の壁が膨らんで、血管壁もその表面の粘膜も薄くなって盛り上がっているようなこともあります。

 

こういった場合は、一種の電気メスのようなもので焼いて、止血をしなければならないことが多いです。どうしても止まらず、鼻腔に全体にガーゼをつめてしっかり圧迫し、1週間ほど入れたままにしなければならない場合もまれにはあります。

 

大人でもこどもでも、大多数は局所だけの問題で、それもキーゼルバッハ部位からの出血です。そうではない奥の方からの出血の場合は、ガーゼをつめなければならなくなることが多いです。

 

血液を固まりにくくする薬(血液をさらさらにする薬)を飲まれている方の鼻出血は、たいした傷でもないのに出血して、止めようと思って触ると、その触ったところからまた出血するなど、やっかいなものです。また、血圧が高いと、鼻出血は起きやすくなります。大人の鼻血では高血圧にも注意が必要です。

 

血液の病気が原因になっていることも、稀ですがあります。鼻以外からの出血、耳鼻咽喉科の領域なら鼓膜の皮下出血や口腔粘膜の粘膜下出血、あるいは手足をちょっとぶつけただけで青あざになるなど、全身性の出血傾向が疑われた場合は、血液検査が必要になります。血液検査に異常の出ない全身性の病気としては、オスラー病という血管の病気もあります。

この場合は虫の動きとともに激痛を伴います。他に、補聴器装用の際のイヤーモールド型取りの印象材が残ったものや、医原性(ガーゼの留置など)の異物もあり得ます。

 

耳・鼻の異物は、放置すれば感染の原因にもなります。小児の鼻内異物の場合、親が異物の存在に気がつかずに、何日か経過して細菌感染を起こし、片側性の悪臭を伴う鼻漏を生じてから、受診することもよくあります。外耳道異物でも、長期に放置されると、感染を起こして、耳漏や肉芽を生じることがあります。

異物の摘出

鼻内異物は鼻腔の前半部に存在することが多いのですが、受診前に無理に取ろうとしてかえって後方に押し込んでしまったり、鼻粘膜に傷をつけてしまっている場合など、鼻腔内に局所麻酔剤と血管収縮剤を塗布した上で、内視鏡で観察しないと、確認できないこともあります。異物の摘出においては、鼻粘膜や外耳道あるいは鼓膜などを、損傷しないことが肝要です。そのためには、異物の種類によって適切な器具を選択し、最小限の操作で確実に摘出するようにします。小児ではしばしば複数の異物を挿入しているので、異物摘出後、取り残しや他の異物がないか、確認します。鼻粘膜や外耳道の皮膚が損傷し、感染の可能性があるときは、抗生物質を投与することもあります。

難聴の原因1位は中耳炎

生まれつい聞こえが悪い病気もいくつかありますが、小児の難聴の原因として一番多いのは、中耳炎です。幼少児の急性中耳炎では熱や痛みが目立ちますが、強い症状が取れたあとも中耳に液が残ったりして、本人は何も訴えなくても難聴はしばらく続くことが多いですから、完治させることが必要です。

 

3.4歳になると急性中耳炎は減りますが、軽い中耳炎が持続して中耳に水が貯まる滲出性中耳炎による難聴はときどき見られます。遷延すると難聴が何ヶ月も続くだけでなく、中耳や鼓膜の細胞にもダメージが後々まで残ることもありますから、鼓膜にチューブを入れる手術が必要になります。4,5歳になると、イオントフォレーゼという方法で注射をせずに局所麻酔を行って手術ができますが、全身麻酔が必要になることもあります。

 

小児は聞こえが悪くてもなかなかうまく訴えられませんので、聞き返しが多いなど、難聴が疑われる場合は、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。