難治性副鼻腔炎(好酸球性を含む)外来
火、水曜日午前10時〜12時に、難治性副鼻腔炎(好酸球性を含む)外来を開設しております。この外来では、以下のことを行います。
1 難治性副鼻腔炎の診断。治療方針の決定。
他の病院で治療を受けていて治らない方の診察もいたします。
2 外来でできる日帰り手術。
内視鏡下副鼻腔手術I、 II型、鼻茸切除術など
(当院で行っている日帰り手術は、比較的小さな手術だけです。根治的な手術には入院、全身麻酔が必要であり、その場合は病院をご紹介します。)
3 手術のための病院紹介
副鼻腔の手術は、術者によりかなり手術成績が違います。入院手術が必要な場合は、副鼻腔手術に習熟した、慈恵医大系の先生をご紹介します。
(例:慈恵医大、太田総合病院、松脇クリニック品川、東邦大学医療センター大橋病院)
4 好酸球性副鼻腔炎難病申請
ご希望があれば、好酸球性副鼻腔炎の難病申請のご相談もいたします。
難治性副鼻腔炎外来受診をご希望の方は、通常の自動電話予約やインターネット予約ではなく、直接窓口に電話(045-595-0560)をして、予約をお取りください。
同時間帯でも、副鼻腔炎外来の予約がない場合は、他の病気の診療も行います。
好酸球性副鼻腔炎とは
近年、好酸球性副鼻腔炎という、難治性の副鼻腔炎の患者さんが増えています。この病気を日本で初めて発見して2001年に好酸球性副鼻腔炎という病名を提唱したのは、私が当院開院前に鼻副鼻腔班の班長をつとめさせてもらっていた、慈恵医大耳鼻咽喉科学教室です。
好酸球性副鼻腔炎とは、多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、難治性の副鼻腔炎です。白血球の一種である好酸球が、血液や粘膜で増えているのが特徴です。しばしば喘息(とくにアスピリン喘息)を伴い、好酸球性中耳炎を合併することもあります。アスピリン喘息とは、ほぼすべての解熱鎮痛剤で喘息を起こす病気です。
鼻内内視鏡写真
好酸球性副鼻腔炎の副鼻腔入口部内視鏡写真です。
鼻腔はたくさんの鼻茸で充満しています。数年前までは耳鼻咽喉科の先生の中にもこの病気を知らない方が多かったですが、現在は手術が必要になるような重症の副鼻腔炎の2割以上がこの病気であることが分かり、たくさんの方に知られるようになってきました。
しかし、それでもまだあまりこの病気を診たことのない先生も多いようです。好酸球性副鼻腔炎は、通常の副鼻腔炎の治療は無効ですので、しっかり診断して治療を行うことが必要です。
好酸球性副鼻腔炎の診断基準と難病指定
好酸球性副鼻腔炎は難病に指定されています。当院は難病指定病院であり、院長は難病指定医です。この病気で難病に認定されている方は、診察料の窓口負担分が、通常の3割から2割になるなどの助成があります。
ただし、全ての好酸球性副鼻腔炎の患者さんが難病に認定されるわけではありません。難病に認定されるのは、次の1)か2)の方だけです。
<重症度分類>
右上の図と以下は、難病情報センターのサイトから引用したものです。
CT所見、末梢血好酸球率及び合併症の有無による指標で分類する。
A項目:①末梢血好酸球が5%以上
②CTにて篩骨洞優位の陰影が存在する。
B項目: ①気管支喘息
②アスピリン不耐症
③NSAIDアレルギー
診断基準JESRECスコア11点以上であり、かつ
1.A項目陽性1項目以下+B項目合併なし:軽症
2.A項目ともに陽性+B項目合併なし or
A項目陽性1項目以下+B項目いずれかの合併あり:中等症
3.A項目ともに陽性+B項目いずれかの合併あり:重症
JESRECスコア11点以上というのは、症状から好酸球性副鼻腔炎を疑われる方の多くが満たすのですが、確定診断のための鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上というのが、なかなかクリアーできない場合があります。
診断、治療と難病申請の流れ
難治性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎を含む)で当院に初めて受診をされる方は、通常の自動予約システムではなく、直接窓口(045-595-0560)に電話してください。
通常の自動予約あるいは直接予約なしで受診されますと、土曜日や連休明けなどの外来が混雑している日には、予備検査だけで帰っていただきだき、診断は後日となる場合があります。
1 問診:症状と気管支喘息、中耳炎合併の有無などを確認。
2 内視鏡:鼻茸の有無と程度、後鼻漏などを記録します。
3 においアンケートで、嗅覚障害の程度を判定します。必要があれば、嗅覚検査(open essence)を行います。
4 副鼻腔CT(コーンビームCT)を撮影します。
5 血中好酸球を見るため、採血をします。
6 検査の結果により、治療方針をご相談します。
中等症以上の方は、初めから内視鏡手術を目的で、病院をご紹介することがあります。
軽症の方や、中等症以上の方でも入院手術を希望されない方は、外来治療を行います。外来治療で経過不良の場合は、あらためて手術のご相談をします。
手術の後も、再発を予防するために、外来治療が必要です。
手術後再発してしまった場合は、デュピクセントという注射が適応になることがあります。
好酸球性副鼻腔炎の治療
1 局所療法
・自己鼻洗浄(鼻うがい)
・ステロイド点鼻薬
副作用もほとんどなく、継続可能な治療法です。これらだけで治癒は難しいですが、手術後の再燃防止として重要です。
2 ステロイドの全身投与(内服)
多くの患者さんで、数日の内服で鼻茸が縮小し、症状が劇的に改善します。しかしそれだけで完治するわけではなく、ステロイドは副作用の可能性があるので長期の継続は避けるべきです。したがって、増悪時短期間の服用が原則です。
ステロイド全身投与の副作用は、骨粗鬆症、高血圧、糖尿病、胃潰瘍などがあり、長期投与ではなく年4回程度の短期投与であっても、副作用のリスクはあるとされています。
経口ステロイドは有効であっても、やめてしばらくすると再燃し、症状を繰り返すことが多いです。
3 内視鏡下副鼻腔手術
好酸球性副鼻腔炎では多くの患者さんに、内視鏡下副鼻腔手術が適応となります。
目的は、各副鼻腔を隔てている薄い骨を切除して副鼻腔を単洞化して、炎症を起こす粘膜を減量するとともに、鼻腔との交通路も広げて貯留液の排出を容易にし、治療薬(ステロイド点鼻)も入りやすくすることです。
手術によって症状も劇的に改善することが多いです。しかし体質までは治らないので、再発することも多いです。
4 合併する気管支喘息の治療
喘息の治療も重要です。吸入(ステロイドと気管支拡張剤の合剤)が中心になります。吸入した後吐き出すときに、鼻から出すと副鼻腔炎にも有効とされています。
5 合併する感染症の治療
好酸球性副鼻腔炎では、しばしば一時的に細菌感染を起こすこともあります。細菌感染を起こすと、それによって好酸球性炎症も悪化することが多いです。
細菌感染を起こしたときは、抗生物質も必要です。
6 デュピクセント(注射)
最近になって保険適応になったのは、デュピクセントという注射薬です。これは、好酸球性副鼻腔炎にも関与する「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑える薬です。本庶佑先生がノーベル賞を取って有名になったオプシーボのような分子標的薬の仲間です。
ステロイドのような明らかな副作用がないため、ステロイドよりデュピクセントを推奨する専門家もいます。一般的には、手術後の再燃に対して繰り返し内服ステロイドが必要になるような方が主な対象となります。
高額(3割負担で1本約19,000円の注射を月1回ないし2回)なので、難病と認定されて医療費の補助が受けることが前提になることが多いです。
病態の研究も進み、いろいろな新しい治療法も開発されており、将来的にはさらに有効な治療法ができると期待されています。
内視鏡下副鼻腔手術
好酸球性副鼻腔炎に限らず、現在副鼻腔炎手術のほとんどは内視鏡で行われています。
院長は日本における内視鏡下副鼻腔手術のパイオニアである慈恵医大耳鼻咽喉科で、数多くの手術を手掛けてきました。右は1995年に出版された日本最初の内視鏡下副鼻腔手術の本ですが、院長も6人の共同著者のひとりです。
当医院開業後も内視鏡下副鼻腔手術I型を中心に日帰り手術を行っていますが、入院が必要な手術は慈恵医大耳鼻咽喉科の後輩の副鼻腔手術の専門家の先生たちを中心にご紹介しています。
病院紹介
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東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科 鴻信義教授
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太田総合病院耳鼻咽喉科
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東邦医科大学医療センター大橋病院耳鼻咽喉科
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松脇クリニック品川(1泊入院による手術)松脇由典先生
- 内視鏡手術は日帰りでできませんか?
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内視鏡手術は程度によって分類されており、程度の軽いものは日帰りでも行え、当院でも内視鏡下副鼻腔手術I型を中心に手術を行っています。しかし程度の重いものは、術中術後の合併症のリスクもあるため、入院設備がある病院で行うべきです。
- 内視鏡手術はどの病院で受けても治りは同じですか?
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残念ながら内視鏡下副鼻腔手術の成績は、術者の経験と技量によって違う場合があります。当院では、慈恵医大の鼻副鼻腔班の後輩だった先生たちが、手術の名手として大学教授や大きな病院の耳鼻科部長として活躍していますので、それらの先生方に依頼しています。
- 何日も入院することはできないのですが、方法はありますか?
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短期入院しかできない方には、1泊入院での手術が可能なクリニックを開院している先生をご紹介することもできます。